歯学部・口腔機能修復学講座歯科理工学分野とは?
~臨床に役立つ歯科材料・機器の研究を目指して~

歯科理工学分野 玉置幸道

歯科理工学分野では学部学生・大学院生への教育と、歯科材料・器械の研究および開発が主な仕事になります。「器材は歯学を貫く」という言葉があります。良質な歯科医療を患者に提供していくうえで、より利便性の高い、安全性の高い、機能性に優れる器材の進歩・発展はなくてはならないものであります。ほか、歯科材料の開発・改良や口腔内を想定した試験法のアイディアを創出する、あるいは工業界で脚光を浴びている新素材の生体への応用の検討や工業界での優れた成形加工技術の導入などに携わることも多く、当然のことながら生体が関わるケースでは臨床講座と共同で遂行することになります。

以前の歯科理工学というとモノ造り、すなわち間接手法で技工作業による製作で扱う材料(石膏、陶材、合金、鋳造など)の研究、それから部分欠損部を修復するための充填材料、合着・接着材料の研究が大半を占めていましたが、近年は材料と生体との関わりが重視されるように、細胞毒性・親和性の研究が大勢を占めるようになってきました。世間の注目を集めている分化可能な幹細胞(Stem cell)を利用した再生医療の研究は、患者自身の細胞より組織構築がなされて移植が可能になると、ドナーを必要としない安全な治療を提供できるため有意義でありますが、実用化するまでにはもう少し時間を要する気配です。そのため代替としての役割を担う人工生体材料の研究は今後もさらに精力的に進められると考えます。

一方で、製作加工法の分野にも新しい潮流が波及しています。従来、適合の良い補綴・修復物や天然歯と見間違うほどの色調の再現性などは歯科技工士の熟練の技に頼っていたのですが、そのアナログ的な製作手法から脱却したコンピュータによる数値制御に基づくデジタル加工技術が急速に拡がりをみせています。昨今のAI技術の進歩を見ていると、いずれは自動車の運転操作自動化のように様々なオペレーションが全自動で可能となっていくことになるのでしょうか。

とはいえ、長らく歯科保険診療を支えている金銀パラジウム合金やコンポジットレジン、アクリルレジン、歯科用陶材は、歯科医療のフィールドではいまでも大事な材料であることは間違いありません。しかし、技術革新により今まで先送りしてきた問題、例えば金属修復物は耐久性に長けるが審美では劣ることが指摘されて久しく、またセラミックスは安全性・審美性に優れるのですが補習が困難などについて、今後は是非を含め問われていくことになりそうです。当講座でも、時代の波に乗り遅れることなく新素材・新技術にも対応をしていくように努めたいと考えております。